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コラム

motherhood:母性コンプレックス

2018/03/23 /

 

昨年5月、母性のヨーガトレーニングコースを
福井でコーディネートし、翻訳・通訳を担当しました。
研修を提供する側と、受講者の橋渡しをさせていただきました。
沖縄母性のヨーガを2ヶ月後に控えたいま、私のこれまでの
母性の学びとこれからの課題について考えてみました。

 

 
〜その2

◇母性コンプレックス

自分の気持ちを正直に振り返ると、生徒さん達の
母性の芽生えに触れて感動しながら、一方で自分が
お母さんとしてどうなのか、
自信を持てないでいました。

リラックスして赤ちゃんと繋がって出産される妊婦さん
おおらかになって赤ちゃんと心を通わせるお母さんの姿に
感動しながらも、そうできなかった自分を見つけて、
内心ではドキリと傷つくこともありました。

バースライトを知った今なら、もっと赤ちゃんと
繋がって出産できるし
もっとおおらかな子育てができるはず…
などと思ったこともありました。

母性のヨーガトレーニングを日本で開催することに
決めて、バースライトのテキストを日本語訳する
作業が延々と続きました。中でもバースライトの
ヨーガのコンセプトのひとつ

『Mother the mother.(マザー・ザ・マザー)』

長い間これにうまく日本語を
当てはめられないでいました。
そんな中、ベビーヨーガのクラスで
こんなことがありました。

生後4ヶ月の女の赤ちゃんと、お母さん。
初めてベビーヨーガに来られたとき、
明らかに憔悴していました。

お母さんは見よう見まねで赤ちゃんと
ベビーヨーガをしましたが、
赤ちゃんはお母さんの目を見ません。
泣かなくて感情表現が少ない赤ちゃんでした。
途中赤ちゃんがむずがる様子を見せ
お母さんは授乳を始めました。

背中を丸くして頭を落として授乳するお母さん…
その丸い背中を見て一瞬でお母さんの苦しみを
理解しました。

そのお母さんがもっとこうするべきだとか、
赤ちゃんをどう扱うべきだなんて問題ではなく、
そのとき、「お母さんが苦しんでいる」という
事実だけが大切でした。

私は思わずお母さんの背中に手を触れ、
大丈夫大丈夫と丸い背中をそっとなでました。
すると「大丈夫?」とお母さんは聞きました。
「それでいいんだよ」と私が応えると
お母さんは静かに涙を流し始めました。

その後の親子リラクゼーションは奇跡のようでした。
お母さんは赤ちゃんに頬ずりしながら、
これでいいの?これでいいの?と繰り返し、
赤ちゃんはキラキラ輝く目でお母さんに
「くーくー」と応え続けました。

その後もお母さんはベビーヨーガに通い続け、
親子の間に微笑ましい結びつきが生まれるのを
見せてくれました。

このことがあって以来、Mother the mother.
とはインストラクターとして

「お母さん(生徒さん)を、
お母さんのように包み込む」

姿勢のことを言っているのだと、理解しました。
わたしが自分の産前産後についてコンプレックスに
思っていたことは、母性の苦しみに共感できる力に
なっているのかもしれません。

 他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
 自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ…
 いまあるものを組み直しつくりかえる
 それがおとなの始まり
 永遠に終わらない大人への出発点…(谷川俊太郎)

母性とはなんだろう、
いいお母さんとはどんなだろう。

なかなか答えの出ない課題ですが
インストラクターとして母性の芽生えに
寄り添いながら、子育てに苦しみながら喜びながら、
ずっと問い続けていくのだろうと思っています。