100歳近いおばあさん。立ったり、座ったり、トイレに行ったり、ご飯を食べたり、買い物に出かけたり、警察に行ったり。全部、自分でできる。
でも、
夜になると誰かが窓から入ってきて、ものをとっていく。
スタッフの人がはいってきて、ものをとっていく。
病院にいっても、あまり、みてくない。
戦争での虚しさや恐怖。
夫との別れと不安。
息子との別れと愛情。
どこにいっても
だれとあっても
うまくいかない。
枕の下にはたくさんの郵便物
シーツの下にも重要書類
ベットの脇にも箱があってそこにも紙。
窓際には衣類のダンボール。
最近、新聞の字が見えなくなった。
下の掲示板に何が書いてあるのかわからない。
お寺からの手紙の内容もわからない。
部屋に訪問すると、何か探し物をされている。
恐怖と不安と
生きることへの欲、渇愛。
虚しさ。苦しみ。
どうしてこんなになってしまったのだろう。
わたしにはわからない。
せんせ、何もないですが、
りんごジュース飲んでください。
ゼリーのカラのグラスに注いでくれた
りんごジュースは美味しかった。