いのち:お浄土の道は遠いから

日曜日の午前中にDr.と部屋に伺いました。訪問看護師から、これから起こること、いつ起きてもおかしくないこと。今の身体のことを家族に話をして欲しいと依頼があっての訪問でした。私は初めての訪問。

部屋に入ると、息子さん夫婦。お孫さんとその子供達で、賑わっていて、一番奥のベットにご本人が仰向けで、大きく息をされていました。口があいていて、舌が丸まったようになっていて、鼻には酸素の管がついていて、息を吸って、息をはいて、息を吸って、息をはいて、息の繰り返しだけでした。

おじいさんの呼吸だけをみていると、自分たちも同じ呼吸になってしまいそうで、そこには、スペースができていました。「息をのむ」

「昨日までは、できていた。」「この検査はした方がよかった。」「これからどうなるのか。」
息をしているおじいさんの隣で息をのまれてしまうと、何かを掴もうとする。何かを掴んでいたいと思う。

私はおじいさんの手を握って、喉は渇いていないですか?と触れました。水はいりませんか?と聞きました。全身で息をしながら、首を横に動かす。子供たちがよってくる、おじいさんと握手した?おじいちゃん、こんにちは。って握手して。と小さな手とシワシワな手が触れる。息で精一杯だけど、頷いている。わかっている。息子さんもお嫁さんも触れる。

触れることで、のまれていた息が、現実にもどりました。娘さんも会いに来た。おじいさんに触れながら、奥さんをつれて来ようかと。別の所に住んでいる奥さん。そうですね。連れて来てくださいといいながら、私たちは部屋を出ました。

数時間後、呼吸が停止しましたと訪問看護師より連絡を受けました。再び部屋に伺うと、椅子に座った奥さんが、日向ぼっこをするように座っていました。

旦那さんの手を握っていたら、手が冷たくなって来て、息をひきとられたそうです。奥さんは、数日前に会いに来た時に、いろんな話をして最後「お浄土の道は遠いから。」と背中をおしたそうです。

おじいさんは奥さんの手を握って安らかに向かわれたようです。

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