テレノイドケア:一期一会

2018年5月15日、テレノイドケアの宮崎詩子さんとプログラマーの中尾さんがテレノイドくんをオレンジに連れて来てくれました。宮崎さんは、ご自身のおばあさんとの介護経験を通じて、「幸福感のある療養支援社会を作ろう!」をテーマに活動されている人です。幸せというモノを対話を通じてお互いに作り出していこう、そんな社会づくりを目指しているそうです。

モノと対話の役割をしてくれるのが
「テレノイド」キモかわいい人形です。

テレノイドは
「明らかに人間に見えるが、人との対話において、
一切不要なものを持たない人間」

をデザインポリシーとして製作されていて、
対話において最も重要な目を中心にして、
体の周辺に向かうにつれて、
特徴が消えていくようなデザインの人形です。

性別も年齢も不明なままで
顔は左右対称、眉毛などをなくせば、
男にも女にも見えます。大人の顔で、
顔と頭の比率を、子供の比率にすれば、
大人にも子供にも見えます。

体はおしりや太ももの面影を残しつつ、
基本的に性別は中性にする。コミュニケーションを
目的とするため、コミュニケーションに大きな
影響を与えないと考えられる手足の細部等を
簡略化しています。

お昼前に、詩織さんの家に訪問し、
午後から施設のおばあさん達に会いに行きました。

詩織さんとは、テレノイドを通じて遠隔診療を行いました。
オレンジに紅谷Dr.が待機し、私達が詩織さんの家に訪問し
テレノイドを紅谷Dr.とみたてて、詩織さんに
抱っこしてもらいながらの遠隔診療です。

詩織さんからは緊張したとの感想。
でもテレノイドを抱っこしながら
紅谷Dr.とハグする姿は少し嬉しそうに
私には見えました。

午後からは施設に訪問。
玄関前から私がテレノイドを抱っこして
宮崎さんが、少し離れて、テレノイドに
なりきって「こんにちは。初めまして」と
みんなが集まっている部屋に入って行きました。

部屋に入るなり、
「ウァアー」
「えぇー」
「なにそれー」
という歓声があっという間に広がって、いつも椅子に
おしとやかに座って、診察を待っているおばあさんが
「お人形さん?赤ちゃん?」と積極的に質問!

もう一人、いつも最後の診察のおばあさん。
すぐに立ち上がってテレノイドに迫って来ました。
「かわいいねーかわいいねーかないいねー」
と、どんどん可愛いが深くなりながら、隣までやって来ました。

「抱っこして」
とテレノイドがお願いすると
おばあさんはためらうことなく、
抱っこして可愛いねー重いねーと言いながら
テレノイドの目を見ながら
ウンウンウンウン
とうなづいく。

「ぎゅーっとして」
とテレノイドがお願いしすると
ぎゅーっとハグ。

おばあさんの目がキラキラしていて
心が踊っているのが明らかすぎて、
隣にいる私にも伝染しました。

そうやって、一人一人を回って抱っこしてもらいました。
おばあさんによっては興味があるけど、今日はいいわ。
とか、恥ずかしいおばあさんもいました。

そして、最後のおばあちゃん。
座っているおばあちゃんの隣に行くと
ちょっと拒否感があるものの、

「抱っこしてー」
とのテレノイドの言葉に
抱っこしていただきました。

「これ人形やの」
とおばあちゃんは言いながら、
テレノイドの手やお尻を
触りながら、ためす様子。

膝の上に置いて、見つめあって
そしたらおばあちゃん
テレノイドの動く口や目を触り出しました。

その姿は、私には赤ちゃんに自分の母乳を含ませる
お母さんの姿に見えて、その瞬間におばあちゃんを
理解したというか苦しみも喜びもぜーんぶある
おばあちゃんと向き合えた気持ちになりました。

そして、周りを見ると写真を撮っている
管理者のスタッフも同じような表情をしていました。

テレノイドってなんやの?
と聞かれたら、
「一期一会」
と言葉が思い浮かびます。

診察で、おばあちゃんと出会うのも
テレノイドとの出会いも、
私とおばあちゃんの出会い。
その瞬間の出会い。

その出会いをセッティングしてくれるのが
テレノイドでしょうか?

シンギュラリティとマンダラ

2018年4月27日に神戸にて行われた「シンギュラリティとマンダラ」に参加しました。演者は宇宙物理学者と高野山真言宗大僧正。シンギュラリティとは、技術的特異点であり機械が人間を超えるポイントのこと。マンダラとは密教のお経をガイドラインにしてコアメンバー、チームの構成図を示したものです。

科学的アプローチと文化、宗教的実践はどこか、方向は違うようでいてそれでいて、でもそれぞれに気になることがある。特に科学的アプローチではAI、ロボットといった、道具以上の物が生まれようとしているとき、周辺にいる人間がどうすればいいか。迷っている答えを決めかねているようです。

宇宙物理学者の松田氏は、どんなにA I、ロボットの技術が進もうと、人間を超えるはずはない。意識を持つはずはないととく。しかしメガネが視界を広げ、スマートフォンが情報伝達に変化をもたらした以上に、限りなくシンギュラリティのポイントにおいて、人間と機械の融合が進むだろうと予想されるという。

大僧正の山崎阿闍梨は、密教の視点より、そもそも宇宙は一つの人格であり、はじめもなければ、終わりもない。光りが生じ、音が伝わり、物質ができ人間もその過程の関係性の中で生きていること。瞑想を日々行うことで、その関係性に気づき、宇宙意識にて生きるべきだと強く述べる。

人間とは何か?
髪の毛、皮膚の細胞、内臓の組織、どれをとっても留まるののはなく、身体には自分がない。それでも、日々、私は私であると認識している自分がいるということ。これが「念」であるというと山崎阿闍梨。それを聞いた松田宇宙学者は、私はそのことは、わかりません。それは記憶であり脳内ではシナプス結合しているだけでしょう。と反論する。

松田宇宙学者は、科学者としての分析において、結果に基づく未来と語る。一方、山崎大阿闍梨は、瞑想の実践における経験において、今、生きていることに何の疑問もない。

科学的分析と宗教的実践。

さて、何を語る集まりだったかと一瞬考えていたら、制限時間終了。人工知能が高くなり、人間を超える時が近い将来にやってくる。それを「超人間・ポストヒューマン」と呼ぶ。仏教では、何度も生まれ変わり、衆生の救済を実践するものを「菩薩」と呼ぶ。山崎阿闍梨の書籍には約20年前に出会い、今回初めて、講演を通じて出会うことができ感動しました。と同時に、90歳を目前にした姿は、彼の強い実践と少しズレのある老いの雰囲気でした。

CiNetシンポジウム脳科学が拓く:「おもろい」社会を目指す

2018年6月27日に開催された第8回 CiNetシンポジウム脳科学が拓く おもろいAI・ロボット社会に参加してきました。AIと脳科学がクロスすることで、「おもろい」社会を目指すCiNet。

「未来社会は、確実にAIやロボットを組み込んだシステムに囲まれた生活環境を生み出します。もちろん、これに貢献するために、AIやロボットの研究開発を進めることは、産業政策の観点からも重要です。しかしながら、社会の中心は人間ですから、個々人が、便利さを享受しつつも、安心して、社会の主役としてわくわく活動できる環境にしなくてはなりません。それには、人間を知ること、人間の感性や思考や認知の特性をよく理解した上での技術開発が重要となるでしょう。脳科学を今進めることの重要性は、まさにここにあります。来るべきAI・ロボット社会をワクワクおもろいものにするために、脳科学が大いに貢献することを来場される皆さまに感じていただきます。」

基調講演では基調講演 「脳情報科学でおもろい未来社会を目指す」と題してIBMにて基礎研究をされている福田 剛志(日本IBM 東京基礎研究所長)の登壇。IBMは世界に12箇所ある研究所があるそうで、技術だけでなく、アフリカとロシア、ブラジルといった地域の特性のニーズを探りながら、研究している。ビックデータと言われる、大量の情報が、インターネットを通じて、クラウドコンピューティングに集まり、データが蓄積され、そのデータを元に知識を利用して次のサービスを提供する。今後は、大量のデータが一箇所に集まるのではなく、今後は、端末側でそれぞれがデータ処理をして次の行動を起こすことになる。「AI move to Edge.一番重要なテクノロジーは見えなくなる。見えなくなる技術が重要」

5mmサイズのコンピューターが開発され、そのコンピューターをAIが制御する。これまでのAIは狭いAI。カメラで、犬がわかる。鳥がわかる。食事のメニューがわかるといった、「プロフェッショナルのためのAI。今は、BroadAIひろいAI。そしてGeneral AI。汎用のAI。より自然に近いAIが生まれる。

「人と関わるロボットの研究開発」と題して石黒浩教授が登壇しました。人間理解を目指して、ロボット作りをしている、おもろい黒い服を着た教授。人間と人間らしく関わることができるロボットを開発して人間のマクロレベルの認知機能の解明を目指す。最終目標は、コンパニオンロボット

コンパニオンとは。。
companion = 仲間、友人、連れという言葉。 英語では、食事や旅、仕事など、行動をともにする相手のことを広く指します。 語源は後ラテン語の compāniōn で、ともに(com)パン(panis)を食べること(ion)という意味。

すしマニアとラーメンマニアが議論するロボット。「すしはラーメンより良い」というテーマに対して賛成意見として「すしは健康的」「すしは職人技」、反対意見として「ラーメンは種類が豊富」などと論点を整理する。さらに「すしは健康的」について「魚は体に良い」、「実はカロリーが高い」など、数百以上の論点を分岐データをインプットすると、人間は簡単においていかれてしまうそう。

https://newswitch.jp/p/8472

また、音声情報を入力するだけ、ロボットが顔の表情や身振り手振りを自動で制御するロボットの開発もしている。

夏目漱石の読み聞かせ

夏目漱石のご子孫の人の声を録音している。

Tottoの部屋

徹子の部屋は膨大なデータがあるので、徹子さんの会話パターンをインプットできるから、誰でも徹子の部屋に参加できるという。

米朝アンドロイド落語

アンドロイドニュースキャスター

エリカが英語インタビュー

人間に近づくロボット。
アンドロイドという存在を目の前にて
存在とは何か?
対話とは何か?
身体とは何か?
心とは何か?

石黒教授の「人間を理解する」
という探求に触れることができました。

いのち:お浄土の道は遠いから

日曜日の午前中にDr.と部屋に伺いました。訪問看護師から、これから起こること、いつ起きてもおかしくないこと。今の身体のことを家族に話をして欲しいと依頼があっての訪問でした。私は初めての訪問。

部屋に入ると、息子さん夫婦。お孫さんとその子供達で、賑わっていて、一番奥のベットにご本人が仰向けで、大きく息をされていました。口があいていて、舌が丸まったようになっていて、鼻には酸素の管がついていて、息を吸って、息をはいて、息を吸って、息をはいて、息の繰り返しだけでした。

おじいさんの呼吸だけをみていると、自分たちも同じ呼吸になってしまいそうで、そこには、スペースができていました。「息をのむ」

「昨日までは、できていた。」「この検査はした方がよかった。」「これからどうなるのか。」
息をしているおじいさんの隣で息をのまれてしまうと、何かを掴もうとする。何かを掴んでいたいと思う。

私はおじいさんの手を握って、喉は渇いていないですか?と触れました。水はいりませんか?と聞きました。全身で息をしながら、首を横に動かす。子供たちがよってくる、おじいさんと握手した?おじいちゃん、こんにちは。って握手して。と小さな手とシワシワな手が触れる。息で精一杯だけど、頷いている。わかっている。息子さんもお嫁さんも触れる。

触れることで、のまれていた息が、現実にもどりました。娘さんも会いに来た。おじいさんに触れながら、奥さんをつれて来ようかと。別の所に住んでいる奥さん。そうですね。連れて来てくださいといいながら、私たちは部屋を出ました。

数時間後、呼吸が停止しましたと訪問看護師より連絡を受けました。再び部屋に伺うと、椅子に座った奥さんが、日向ぼっこをするように座っていました。

旦那さんの手を握っていたら、手が冷たくなって来て、息をひきとられたそうです。奥さんは、数日前に会いに来た時に、いろんな話をして最後「お浄土の道は遠いから。」と背中をおしたそうです。

おじいさんは奥さんの手を握って安らかに向かわれたようです。

いのち:旦那が亡くなってしまったんです。

はじめに彼女に会ったのは私がオレンジホームケアクリニックで働き始めた5年前。旦那さんは難病で在宅で生活をするために、看護師、介護士、リハビリ、Dr.、ケアマネ、近所の人と一日の間に、入れ替わり立ち替わり、人が出入りしていた時。一つの事に集中するのが得意な人なので、訪問時間が遅れたり、いつもと違う人が来たりすると、少し感情的になる人。

その年の夏に旦那さんが亡くなりました。それ以来、月に一度、会いに行っています。一年目。二年目。彼女は毎月日帰りのバス旅行に一人で申し込み、旅行先で友達をつくってまた旅行に行くことを繰り返していました。

三年目を過ぎた頃、実家の墓を整理して、福井の海が故郷になりました。そして会ったことのない父親を戸籍をたどって探しだし、再婚していた父親の家に手紙を出して、父の写真を送ってもらい、父と対面しました。初めての父の顔。

四年目。ハローワークに一緒に行きました。履歴書につける写真を取りにカメラのキタムラに行く時の勝負服の色は、「赤」。旦那さんを無くしてからの復職した職場では、色々な作業を求められ、混乱してしまって感情的になって辞める。カフェやパン屋、幼稚園と近くの職場を求めて探すがいずれも叶わず、シルバーセンターに出会う。そこには、数々の仕事があり、これもあれもそれもと、気がつけば四箇所の仕事を掛け持ちのキャリアウーマンに。

私の月に一回の訪問は、旦那さんが亡くなってからの数年は、家に伺い、寂しさ、苛立ち、不安、をきいていましたが、いつしか、丸亀製麺にいったり、はま寿司にいったり、ミスタードーナツにいったり。

ある時、鰻屋に行きました。その鰻屋は旦那さんと何回も何回も行っていた馴染みの店。亡くなる前、タクシーで食べに行ったが満席で食べれずに泣く泣く家に帰った鰻屋。

席についてメニューを持って来た女将さんの顔を見るなり、ポロポロと落ちる涙。

きいてましたよ。
女将さん。旦那が亡くなってしまったんです。
わかっていますよ。きいていました。
女将さん。旦那が亡くなってしまったんです。
今日は美味しい鰻を食べてください。

言葉は必要ありませんでした。
鰻がうまかった。

先週、彼女に会いに行ったのですが、来月の予定の話になりました。旦那さんの命日が近いので、お経さんでもあげましょうか?と聞きました。私はバッチリと袈裟をきて、長めのお経をあげようと思っていたら、彼女から一言。

そのあと、「はま寿司」いける?

いのち:どうしてこんなになってしまったのだろう?

100歳近いおばあさん。立ったり、座ったり、トイレに行ったり、ご飯を食べたり、買い物に出かけたり、警察に行ったり。全部、自分でできる。

でも、
夜になると誰かが窓から入ってきて、ものをとっていく。
スタッフの人がはいってきて、ものをとっていく。
病院にいっても、あまり、みてくない。

戦争での虚しさや恐怖。
夫との別れと不安。
息子との別れと愛情。

どこにいっても
だれとあっても
うまくいかない。

枕の下にはたくさんの郵便物
シーツの下にも重要書類
ベットの脇にも箱があってそこにも紙。
窓際には衣類のダンボール。

最近、新聞の字が見えなくなった。
下の掲示板に何が書いてあるのかわからない。
お寺からの手紙の内容もわからない。

部屋に訪問すると、何か探し物をされている。
恐怖と不安と
生きることへの欲、渇愛。
虚しさ。苦しみ。

どうしてこんなになってしまったのだろう。
わたしにはわからない。

せんせ、何もないですが、
りんごジュース飲んでください。

ゼリーのカラのグラスに注いでくれた
りんごジュースは美味しかった。

いのち:いいも。わるいも。こんなもんや

101歳の彼女はいつも、Dr.と私が部屋に伺うと、「ありゃ。お客さんか。じゃあ私は、どこかに退散しようかな。」という表情をされながら、深く持たれた椅子から動こうと、少し手を動かします。あなたに会いにきたんですよと。娘さんから言われて、一体、何が始まるんだろうと不安になりながら座りなおします。

座っている椅子を動かされて、Dr.と正面に向き合います。急行電車の向かいシートのように近い。「調子はどうですか?」と聞かれ

「いいも。わるいも。こんなもんや。」
といつもの答え。
「なんか、あったときは、そんときや。」
とつぶやかれます。

血圧測定器が左腕に巻かれ、
少し締め付けられてくると

「ひゃー痛いー。なんじゃ。ひゃー」
とビックリされます。

測る前に、「痛いですよ!」と宣言すると、少し我慢をされますが、いつも決まって、「痛い。なんて痛いんや」とコメント。

そんなビックリおばあさんですが、若い頃は車に引かれ、命が絶えたカラスや猫、犬、動物たちを丁寧に埋葬されてきたそうです。この猫たちは、うちで産み落としたんです。

猫たちが我が物顔で机の上に寝そべっている。

生きとし生けるものに慈しみ。
101歳の女性。
「なんか、あったときは、そんときや。」

人生こころ旅with Orihime

身体が動かなくても、心が外に出たくない気分でも、少しでも気になること、場所があれば、

あなたのかわりにいきます。
あなたと一緒に行きますよ〜

おんぶ紐で抱っこしているのはOrihimeくん。カメラとスピーカーが付いていて、離れたところから遠隔で、カメラの角度と会話ができます。

自分の分身のように離れた場所から操作できて、一緒にいる気分にさせてくれる。そしていろんな思い出が浮かんだり、もう一回行ってみたくなったり、全然知らない所に興味が湧いたり、「未知との遭遇」

でも昨日は暑かった。

いのち:せんせー私のことを忘れないで!

以前は、お父さんと二人暮らし。お父さんに病いがあって、ドクターの訪問診察が月に二回行われていました。私も、不定期ですが、訪問していました。

いたいー痛いー
肩がイタいー
背中がいたいー
いたいー痛いー

とつぶやかれる人で、部屋の壁には広告紙の文字を切り抜いて、貼り合わせた芸術作品が張り巡らされて、つぶやき詩集もありました。

ドクターが痛いですねーどこが一番痛みます?痛いですねーと診察をしている隣で、おばあさんは、深い息を吐き出すように、じっとされていました。おばあさんはどうですか?と聞くと、目が見えにくいです。と丁寧に答えてくださいました。部屋はお父さんのつぶやきと芸術作品に溢れていて、その中に、白い花のように、そっと座っていたおばあさん。

数年がたって、家を離れて、共同生活になって、お父さんがなくなりました。おばあさんのベットの上にはお父さんの写真が何枚か飾られています。

今も、定期的にドクターが訪問していて、私もときどき伺います。

せんせー
お忙しいのにいつもありがとうございます。
お待ちしていました。

と玄関で出迎えを受けて、部屋に案内される。清楚な部屋、白い花の香りが立つような気持ちいい空気に満たされています。窓の外には、緑の野原が広がる。

調子はどうですか?
せんせー。本当に幸せです。
こんな所に住めて、
こちらの方も本当に優しくて。
本当に幸せです。
そうですか。よかったですね。
どこかに出かけましたか?
いいえ。
あら、この前行きましたよ!と職員の人。
そうでしたか?
春江のゆりの里に行きましたよ。
と聞くと、おばあさんは、満面の幸せいっぱい笑み。
そうでした。「ゆり」がいっぱい咲いていました。

せんせー。
毎晩寝るときに、先生の顔を思い出して寝るんです。
ありがとうございます。お父さんはどうですか?
お父さんは毎晩、拝んでいます。
お父さんは拝んでいるんですね!
はい。せんせー私のことを忘れないで!

診察が終わって、
おばあさんとドクターは手を繋いで
ヴァージンロード。
写真撮りますねーと言った途端、
おばあさん、ドクターの手を自分に引き寄せて

イヤだー
はずかしい。

お花が満開。
恋の季節です。

写真は春江の「ゆりの里」です。