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グリーフケア:かしこーならんと。(2011年冬)

「かしこーならんと」
お父さん、お母さんの
言うことを聞いて
「かしこーならんと」
とがおばあちゃんの口癖。

近所のお地蔵さんに
毎日お参りして、
子ども、孫の健康、安全
を祈るおばあちゃん。

91歳になり
大腿骨が骨折し
一カ月前から入院していた。

5年続いた透析が出来なくなり
週末、透析ができなければ
覚悟してくださいと言われ
見舞いに行った。

朝、病室に入ると
「そら」を仰ぐおばあちゃん。
目を大きく見開き
口を開け

ゼーぜー

生きていた。
骨がむき出しになり
顔には、苦しみが
あふれていた。

「生きる」

「苦しみ」
が同じに見えた。

おばあちゃんが
「ベットを起こしてくれ」

起こすと、立ち上がろうと
するおばあちゃん。

一か月も入院していて
家に帰りたかった。

腰の骨が疲労して骨折した。
身体を使いつくした。

立ち上がることは出来ないけど
立ち上がる。帰りたいという気持ち
が伝わってきた。

胸につながっているコードを
しっかりした指先で、たぐりよせ
丸めて、着物の中にしまおうとする。

あまりに引っ張りすぎて
コードの先にある計器が倒れそうに
なるので、

倒れちゃうよ。おばあちゃん。
どうするの?と話しているうちに
綺麗でありたい
と身なりを気にしているのだと
分かった。

コードを丸めるのを手伝い
着物の中にしまいこんで
おばあちゃん、
綺麗になったよ。

と手をさすった。
手の甲はカラカラにひあがり
指の爪まで枯れていた。

そうやって、おばあちゃんに
触れていて
恐怖につつまれている。
と分かった。

今はね。
おばあちゃん。

息をすいこんで
息をはく

それだけでいいんだよ。
ちょっと楽になったら、
それを鼻でやってみて。

おばあちゃんは
言われるままに口を閉じ
鼻で呼吸を始めた。

胸が膨らみ、腹が縮む。
怖いね~おばあちゃん。
痛いね~おばあちゃん。

だから、呼吸をみようね。
うんうんうん
と聞いてくれて
そのうちに、顔が穏やかになり
息をすうたびに瞼が閉じる。

恐怖が消え、
緊張がひいていき
眠りにはいった。

3歳児の赤ちゃんのように
深い眠りにはいった。
私はそっと部屋を出た。

その日の夕方
おばあちゃんが
亡くなったことを
しった。

雑貨屋をしていた
おじいちゃんとおばあちゃん。

カンバンには
「良い品 安く売る店」
と書いてある。

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「かしこーならんと」